【出産レポ その4】忘れられない音
出産レポ その1
出産レポ その2
出産レポ その3
午前4時に入院し、部屋で陣痛と格闘すること5時間…助産師さんが部屋に入ってきて進捗状況を聞いてきます。
痛みだけやたらめったら強く陣痛の間隔は6分で変わらないことを伝えると、とりあえずモニター(陣痛の波や強さを計測する機器)をつけてみましょうかということに。
午前9時半、陣痛室に移動。
モニターをつけてみると、痛みの強さはほぼMAX値なのに間隔はやはり6分。
内診してみても子宮口の開きもたいして進んでいない。
「このままモニターをつけたまましばらく陣痛室で様子を見ましょう」と助産師さん。
あー、なんで進まないんだー、と思いつつ痛み逃しに集中していると、陣痛の波と共にピーピーピーという警告音が鳴り響きました。
えっ?えっ?と戸惑っていると、バタバタかけこんでくる助産師さん。
私のお腹に当てている機械を当て直したりして様子をうかがっています。
先ほどの警告音は、陣痛の波と共に記録されている胎児心拍の異常を告げるものでした。
警告音は少ししたら鳴り止み、心拍の数値も元通りに。
「姿勢を変えたり、動いたりしましたか?」と、おそらくお腹に当てている機械がずれた可能性があるかどうかを確認するための質問をされ、『動いてません』と答えると明らかに曇る助産師さんの顔。
しかし、また「様子を見ましょう」と部屋を出ていってしまいます。
それから10分もしないうちにまた鳴り響く警告音。
どうやら私の陣痛の波と共に胎児心拍が落ちている様子…。だんだん不安が募ります。
「もしかしたら、へその緒が赤ちゃんの首に巻きついているかもしれませんね。へその緒が巻きついていると胎児が圧迫されて心拍が下がることがあります。」
と助産師さんに言われ、今までの超音波エコーでへその緒は見えはしても巻きついているなどの様子はなかったので、まさかと思いましたが、現に陣痛の度に下がる胎児心拍。
ピーピーピーと、何度も警告音が鳴ります。
何度目かの警告音で駆け込んできた助産師さんが、どう見ても焦った表情で、他の助産師さんに「先生呼んで!」と叫び、何かの栓(おそらく酸素ボンベの栓)を引っこ抜き私に酸素マスクを付ける。
ドッドッドッ…というリズムを刻んでいた胎児心拍が、
ドッ…ドッ……ドッ…と不規則に、遠くなっていきます。
「深呼吸してー、ハー、ハー、」という助産師さんのリードに従いながら深呼吸しているうちに涙が溢れ出てきました。
どうしよう、赤ちゃんの心拍が落ちてるってことは、危ない状況だってことだよね…。どうしようどうしよう、赤ちゃん死んじゃったらどうしよう…!
軽くパニック状態になりながら赤ちゃんに酸素を届けるために必死で呼吸しました。
お願いだから、戻って。
ドッ…ドッ…ドッドッドッ…
先生が駆け込んできたころには、心拍も落ち着き、「あれ、マスク使ったの?」と呑気な様子の先生に「だってすごく落ちたんですよ!」と軽くキレる助産師さん。
そのまま内診。
「んー、あまり赤ちゃんが降りてきていませんね」と先生。
先生と助産師さんは一度部屋を出ていき、しばらくして先生だけ戻ってきました。
「赤ちゃんの頭が、本来と逆の向きで骨盤にはまってしまっていて、赤ちゃんが降りられなくなっています。陣痛がくる度に心拍が下がっているので、へその緒が首に巻きついている可能性もあります。このままお産が進まないと赤ちゃんもお母さんも体力がなくってきてしまいます。帝王切開も視野に入れて、ご家族とも相談しながら進めていきましょう」
と告げられました。
この時には、帝王切開も致し方なし、という心境になっていました。
腹を切られることの怖さより、警告音のほうがずっと怖く、手術の痛みよりも、娘を失ってしまう痛みの方が、何倍も何十倍も何百倍も辛いと思ったから。